無愛想で糖度高めなカレの愛
「いいわね~なんか運命的よね~」

「俺の運命の相手はまだ現れてませんよ」


さらっとそんなことを言い残し、恵次はぽかんとする私達をよそにオフィスのドアへと歩いていく。

あの人、わざと意味深なことを言って、課長の反応を面白がっているんじゃ……。

案の定、目をハートにするお局様。他の人の目も気にせず、「立候補するわー!」と彼の背中に向かって叫ぶものだから、私はそそくさと彼女のデスクから離れるのだった。



その日、定時を過ぎてからも、私は居残って仕事を続けていた。徐々に人が減り、美結ちゃんも私を気にかけてくれながら、遠慮がちに先に帰っていった。

周りに誰もいない方が、頭が働きそうな気がする。そう思い、広報課の方からも人の気配がなくなり、時計の針の音しかしなくなったオフィスの中、さっそく夏に向けての新商品のコンセプトを考えてみることにしたのだ。


夏はやっぱり溶けてしまうから、どうしても売れ行きは低くなる。そこをなんとかして、夏でも売れるチョコレートを生み出したい。

あれこれ考えを巡らせるけれど、なかなかこれといった案が浮かばない。必死になればなるほど、迷路に迷い込んだみたいに出口が見えなくなる。

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