無愛想で糖度高めなカレの愛
●決戦のバレンタインと彼の秘密
バレンタイン当日の午後三時、私は夕浬くんのマンションの前に来ていた。手には午前中に買った、有名ショコラティエが監修したというチョコレートを持って。
彼の口に合うかはわからないけれど、私達の勉強にもなるかもしれないと思って、これを選んでみた。
……と言っても、私は試食会以来、いまだにチョコレートを口にしてはいないのだけれど。
でも、夕浬くんと一緒なら美味しく食べられるかもしれない。今日のバレンタインには、そんな淡い期待も抱いているのだ。
しかし、自分が浅はかだったことに、着いてすぐに気が付いた。
駐車場には彼の車が見当たらない。土曜日だから家にいるものと思っていたけど、出掛けちゃってる!?
「ど……どうして連絡しなかったの私~~」
勝手に休日は家にいると思い込んでいたよ……だって彼、絶対インドアだし……。なんて、どうにもならない言い訳をしながら頭を抱え、がっくりとうなだれた。
それでも一応部屋まで行ってみようかと、エントランスに向かって足を進めると、見覚えのある女性がそこから姿を現す。
あれ、あの人って……と考えたのは一瞬で、私に気付いた彼女と同時に目と口を開いた。