無愛想で糖度高めなカレの愛
「気になるなら、どうぞ会いに行ってきて。もちろんここのお勘定はいいから」

「あ、いえ、払います!」


急いでお財布を取り出そうとする私を、彼女は「いいのいいの!」と、両手を振って制した。


「私が無理に連れてきたんだから! それより、早くあの子に会いたいでしょう?」


私の心が彼に向かって駆け出していることが見るからにわかるのか、にやりとしながら言われ、私は照れ笑いを浮かべた。

おごってもらう代わりに、私がみかんを彼に渡しておくと言い、重みのある袋を受け取った。身支度を整えると、改めてしっかり頭を下げる。


「本当にありがとうございました」

「こちらこそありがとう。少しでもあなたとお話できて、とっても嬉しかったわ」

「私も、楽しかったです」


彼の秘密もいろいろ教えてもらっちゃったし。

嬉しいようなちょっぴりむず痒いような、何とも言えない気持ちで、にこにこと笑うミツコさんに笑顔を返した。


私の車は、夕浬くんのマンションから程近いスーパーの駐車場に停めさせてもらっている。広い所だから少しの間なら大丈夫だと、以前彼に教えてもらったのだ。

足早にそこへ戻ると、助手席にみかんとチョコレートを置き、会社へと車を走らせた。


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