無愛想で糖度高めなカレの愛
気まずそうに、口元に手をあてて俯く安達さんが目の端に入るけれど、意識のすべては夕浬くんに向いている。

どうして、こんなことになっているの?

どうしてふたりで会って、そんな体勢になっていたの? 何で……!?


身体が動かず見つめ合っていたのは、おそらくほんの数秒。その間に、私の中では疑問と嫉妬が渦を巻き、呼吸が苦しくなっていく。

気が付けば、私は研究室のドアを開けたままその場から駆け出していた。


「明穂さん!」


走り去る私の耳に、焦燥感が滲む彼の声が届いた。けれど、引き返すことなんてできない。

そのまま駐車場に出て自分の車のもとまで走り、ようやく足を止めた。


「は……っ、はぁ……」


そんなに長い距離を走ったわけでもないのに、胸が苦しくて仕方ない。動悸は激しくなる一方だ。

夕浬くん……私に愛想尽かしちゃったのかな。この間、安達さんと一緒に帰って仲良くなった?

あの腕の中は、私だけの場所だと思っていたのに──。


「……っふ、ぅ」


どしゃ降りの雨を受ける車のフロントガラスみたいに、一気に視界が悪くなる。口元を手で押さえ、嗚咽を漏らした。

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