無愛想で糖度高めなカレの愛
「明穂さんの場合は、その効果が裏目に出てしまったのかもしれません。甘いものを食べたいという気にならず、無意識のうちに脳がチョコレートを拒否していた、とか。試食会の前に、手塚さんと会ったりしませんでしたか?」

「そういえば……最初におかしいと思った試食会の直前、恵次と会ったわ」


はっとする私の脳裏には、数週間前のひとコマが蘇る。楠木百貨店との商談が上手くいったと、彼がお礼を言いに来た時のことが。

私が甘いものを欲しなくなったのはそれより前、恵次と関わることが多くなった頃からだ。香りのせいだと言われてみれば、そんな気もする。

まるで謎解きをしているような気分になっていると、夕浬くんは「つまり」と要約してくれる。


「甘いものを欲しない状態でチョコレートを食べたから、美味しさが半減したように感じてしまった……という可能性もあるってことです。空腹じゃない時って、料理の美味しさを感じにくいでしょう? それと同じで」

「なるほど……!」


例えがわかりやすくて、すんなり納得していると、夕浬くんは人差し指で自分のこめかみ辺りをトントンと叩く。


「問題は、そのせいで“チョコレートを美味しく感じない”と、脳にインプットされてしまったことです」

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