無愛想で糖度高めなカレの愛
目から鱗だ。ただの思い込みだったなんて。

それが原因だと断言はできないけど、かなり有力じゃないだろうか。

私は最初に違和感を覚えた時に、自分の舌がおかしいと思い込んでしまったのだ。それからそのことが常に頭にあったし、夕浬くんの仮説は正しい気がする。

納得していると、彼は香料の小瓶を元に戻しながら言う。


「ただ、三年前のことは、もしかしたら本当に味覚障害だったのかもしれませんが」

「味覚障害?」


なんとなく聞いたことがある名前だけど、どういう症状をいうのかわからず、頭にハテナマークを浮かべる。

そんな私に、夕浬くんは自分で調べたらしい味覚障害についての知識を、細かく説明してくれた。細かすぎたので自分なりに要約してみると……。

その症状は、食べ物の味がわからなくなったり、口の中に何もないのに苦く感じたりするという。味が濃い食材や香辛料の過剰摂取、ストレスなどが原因で起こるのだそう。

当時、私は恵次に合わせようと、お酒のおつまみのような濃い味のものをよく食べていたし、ストレスも溜まっていたし……。


「思い当たることが多いなぁ」


昔を振り返り、なんだか決まりが悪くなって頭を垂れた。あの時は本当に、軽く症状が表れていたのかも。

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