無愛想で糖度高めなカレの愛
「その時の記憶があるから、余計おかしいと思い込んでしまったのかもしれませんね」

「うん……思い込みが原因だったなんて考えもしなかったわ」


夕浬くんの言葉に、私は苦笑して頷いた。そして、私の前のデスクにある、彼が作ってくれた生チョコに目線を移して呟く。


「じゃあ、もう大丈夫なのかな」

「試してみてください。そのためにコレを作ったんで」


眼鏡の奥の瞳は、優しい色をして私を見つめる。目を見合わせてから、お皿に添えられた爪楊枝に手を伸ばした。

けれど、やっぱり少し躊躇してしまう。もし素直に美味しいと思えなかったら、せっかく時間を掛けて作ってくれた彼に申し訳ない。


「……ためらいますか?」


爪楊枝を持ったまま止まってしまっていた私は、彼の一言ではっとする。

ダメなんだって、悪い方に考えちゃ! 固定観念を捨てるのよ!

自分を叱咤して、一思いに口に入れようと楊枝をチョコレートに刺した、その時。隣の彼がすっくと立ち上がった。

気を取られているうちに、私の手から奪われたチョコレートは、そのまま彼の口へと運ばれる。


「えっ!?」


夕浬くんが食べちゃうの?と、ぽかんとしながら見上げていた、次の瞬間。

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