無愛想で糖度高めなカレの愛
形の良い唇にチョコレートを挟んだ彼は、身体を屈めて私の後頭部を片手で支える。

その伏し目がちの美麗な顔が近付き、ドキンと心臓が跳ねると同時に、唇が触れ合った。


「ふぁ、ん……!」


びっくりしている間にも、彼の舌に押されて口の中にチョコレートが入り込んでくる。

まさかの口移し!? いくら私がためらっていたからって、こんなふうにするとは……!

恥ずかしさでギュッと目をつぶり、口いっぱいに広がるカカオの香りと甘さ、そして彼の舌を受け止めた。


ひんやりしていたチョコレートが、私と彼の熱でとろりと蕩ける。ものすごくなめらかで、舌まで溶けてしまいそう。

ちゅ、と音を立てて唇が離されるけれど、私は目を閉じたまましっかり味わう。甘さが喉を通ると、品の良いリキュールの香りがほのかに鼻を抜けていった。

キスでさらに甘さが上乗せされてもわかる。このチョコレートは、すごくすごく美味しいって──。


「……どう?」


うっとりしながら目を開く私に、夕浬くんはフェロモンたっぷりの笑みを浮かべて聞く。それは自信に満ちているようにも見え、私はもう降参の旗を挙げるしかない。


「すっごく美味しい。最高」


頬を熱くしながらはにかんで言うと、彼も嬉しそうに顔をほころばせた。


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