無愛想で糖度高めなカレの愛
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二月十四日、バレンタイン。
スーパーやデパートには、きらびやかな包装が施されたチョコレートが所狭しと並ぶ。
生チョコ、トリュフ、ボンボンショコラにガトーショコラ……。
無限にあると言っても過言ではない種類から、誰に何を贈るかを選ぶのは容易なことではない。
さらには“告白”というミッションまで課せられるのだから一大事だ。恋する女子にとっては、まさに決戦の一日。
……しかし。
県内唯一のチョコレート専門メーカーで働く私達にとっては、この数ヶ月前から戦いは始まっている。
「最近では、本命や義理以外にも、自分用チョコや友チョコとして買う人も増えています。女性をターゲットにしたチョコレートにも力を入れませんか?」
十月下旬の開発会議で、商品開発課の私、間宮 明穂(マミヤ アキホ)は、意気揚々とメンバーに向かって提案していた。
ミーティングテーブルをニ台横並びにくっつけた周りに座っているのは、開発課と研究室から選ばれた男女十人。皆は私の意見に頷いたり、首をかしげたりしている。
開発課に配属されたばかりの頃はこの時間がドキドキものだったけれど、入社六年目にもなるとだいぶ肝が据わったようで、緊張感よりもワクワク感の方が強い。