無愛想で糖度高めなカレの愛
また頭に浮かぶ彼の姿を掻き消していると、美結ちゃんが小さくため息をついて苦笑する。


「先輩って恋愛に対しては受け身ですよねぇ。会議では篠沢さんに負けず劣らず押せ押せなのに」


今度苦笑するのは私の番だ。

その通りなのよね。会議では言いたいこと言えるし、強気でいられるんだけどな。


「先輩も今年で二十八でしたっけ? そろそろチョコ以外とも向き合いましょうよ。このままじゃ虫歯になって歯抜けて終わりですよ!」

「美結ちゃん、言い方が……」


もっと他にないのかい、と心の中でつっこみながら笑いを堪える。

チョコレートのことだけ考えて生きているわけじゃないって。それで人生終わるようなことにもしたくないし。

ただ、今は自分から恋を探す気にならないだけ。


「先輩、美人なのにもったいないですよ。合コン行きましょ、合コン!」

「それは美結ちゃんが行きたいだけでしょー」

「あは。バレた」


無邪気に笑う彼女につられて、私も笑いがこぼれた。

美結ちゃんは今年の夏に彼氏と別れたらしく、すっかり次の恋を探そうと意欲的になっている。彼女はまだ二十五歳だから、焦る必要はないけれど。

私にも、そのくらいの気持ちがあればいいのに……。

きっと今年のクリスマスも、おひとり様で静かに過ごすことになりそうだ。


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