無愛想で糖度高めなカレの愛
●運命の恋は糖度100%
紅白の梅が咲き始めた三月、私はミーティングテーブルを囲む皆を見回して、資料片手に力強く話し出す。
「夏場はやはりチョコレートの売上が落ちるのは否めません。ですが、この“凍らせて食べるチョコ”ならいけるんじゃないでしょうか」
皆が資料を見つめる中、私の隣に座る美結ちゃんが、ふむふむと頷いて言う。
「最近“溶けないチョコ”はよく見かけますしねぇ」
「そう、だからウチはこれで勝負したらどうかなって。凍らせても、口の中に入れればたちまちとろけるような……」
バレンタインに夕浬くんが作ってくれた生チョコのような、とろけるチョコレートを想像してうっとりしていると、美結ちゃんが表情を明るくして賛同する。
「アイスみたいなチョコレートですか! それ最高~」
「でしょ!? 棒付きアイスみたいな舐めるチョコとか作っちゃったら、斬新すぎて話題騒然──」
ゴホン、とわざとらしい咳払いで話を中断するのはもちろん、前方に座っている篠沢課長。
そんな彼女にぎこちなく笑い返す私は、約五ヶ月前と何も変わっていないらしい。……いや、変わっていないからこそ、自信を持って皆の前に立てるのか。