無愛想で糖度高めなカレの愛

夕浬くんと会った時に、どうして私を推薦したのかを聞いてみようと思っていたら、週末にその機会がやってきた。

初めて訪れた有名ホテルのレストラン。高級感とカジュアルさのバランスが良いそのお店で、ランチバイキングの料理をふたりで取りながら、何気なく聞いてみた。

すると、ローストビーフをシェフが切り分けてくれる様子を見ながら、シンプルな私服姿も素敵な彼が口を開く。


「あえて責任ある立場になった方が、明穂さんが自信を取り戻せるんじゃないかと思ったんですよ」

「自信を?」


小首をかしげる私を見下ろす彼は、薄く微笑みかけながら頷いた。


「あなたが味覚のことで悩んでいることにも、それが思い込みじゃないかってことにも気付いてたから。リーダーを務めても大丈夫なんだよ、って意味も込めて」


……そんなふうに思ってのことだったなんて。本当に、いつも私のことを考えてくれているんだね。

厳しくも愛を感じる、彼の気遣いにじんわりと胸が温かくなり、自然と頬が緩む。


「ある意味、夕浬くんの愛のムチだったわけね」

「そうとも言うかな」


ふたりで微笑み合いながら、ローストビーフが乗せられたお皿を手に、窓際の席に向かって歩き出した。

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