無愛想で糖度高めなカレの愛
しかし、私達の席が見えて来た時、夕浬くんが表情も声色も感情を無くして言う。


「今日のこの食事会も、明穂さんの愛のムチですか?」


ギクリとする私。だけど、これは私がセッティングしたことではない。

夕浬くんの視線の先には、わが妹の沙織と、なんと恵次の姿が。楽しそうに談笑しながら料理を食べているふたりを見て、私は苦笑いを浮かべる。


「いや、これは……私もかなり予想外のことで……」


今日の集まりは、つい一昨日、恵次に“商談の件のお礼がまだだったから、ホテルのランチバイキングに行かないか”と誘われたことから始まる。

そういえば、私も沙織にランチをおごると言っておきながらまだだったことを伝えると、沙織も協力してくれたから一緒に、という話になった。

恵次とふたりきりはもちろんNGだけど、沙織もいるならいいかな……と迷っていると。あろうことか彼は、『お前の彼氏も呼んでいいよ』と言ってきたのだ。

私が返事する前から恵次はさっさと四人で予約してしまい、今に至る。


「……こんな意外すぎる組み合わせで食事することになるとは思いませんでした」

「私も……」


お互い微妙な顔をしながら席へ戻ると、沙織がニッコニコの笑顔を私に向ける。

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