無愛想で糖度高めなカレの愛
「わぁ、ローストビーフ美味しそう！　まさか恵次さんがこんないい所連れてきてくれるなんて～」

「お気に召しましたか、沙織姫？」


沙織の隣に座る恵次の、歯の浮くようなセリフにも、彼女はとっても嬉しそうに笑っている。

はぁ、ちょっとうんざり……。いくら彼氏の了解を得てきているからって、こんなとこ見られたら修羅場になるんじゃ？

目の前のふたりを据わった目で眺める私の隣では、不満を若干露わにする夕浬くんが、赤いお肉を箸で摘みながらボソッと言う。


「何故俺まで？」


独り言みたいなそれに反応した恵次は、ニヤリと口角を上げて夕浬くんを見据える。


「一度ゆっくり話してみたかったんだよ、明穂の今カレとさ」

「アナタ何様ですか」


私が冷たく言い放つものの、恵次は「元カレ様？」とふざけたことを言って、軽く笑い飛ばすだけ。

頭をはたいてやりたい衝動に駆られつつ、フォークをサラダのブロッコリーにグサッと刺した。

沙織は興味深そうに私達を眺め、頬杖をつきながらこんなことを言う。


「お姉ちゃん、ほんと罪な女だよねぇ。こんなイケメンふたりを手玉に取っちゃってさー」

「取ってない！」


即座につっこむと、恵次が笑いながらグラスに口を付けた。

夕浬くんは黙々と箸を進めているし、もーほんと何なんだこの集会は……。

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