無愛想で糖度高めなカレの愛
だから何様なのよ、と再び文句が口をついて出そうになったものの。


「言われなくてもそのつもりです」


迷いのない夕浬くんの返事を聞いたら、胸がトクトクと優しく波打って、口元が緩んでしまった。

照れ隠しで手元の料理に目線を落とし、大口を開けてベビーロブスターを放り込む。そんな私の耳に、クスッと笑う恵次の声が届く。


「じゃあ、ラブラブなふたりは置いといて。ケーキでも取りに行こうか、沙織ちゃん」

「行きましょ行きましょー」


ニヤニヤする沙織も一緒に席を立った。端から見るとカップルみたいなふたりを静かに見送りながら、夕浬くんがぽつりと呟く。


「手塚さんって何て言うか……掴み所がない人ですね」

「ほんと。よく付き合えてたなぁ私」


呆れた口調でそんな冗談を言えるくらい、私の彼に対する感情は変わったみたい。

目を見合わせてぷっと笑うと、夕浬くんはなんだか感慨深げに言う。


「でも、彼とのことがあったからこそ、俺達の今があるんですよね」


……そうだね。

彼の甘い色香に、恋愛以外でも悩まされることになるとは思わなかった。けれど、それもすべて夕浬くんとの関係を深めるために必要なことだったのかもしれないと、今となっては前向きに考えられる。

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