無愛想で糖度高めなカレの愛
ぺこりと軽く頭を下げた河瀬くんは、目を丸くする私のもとへ歩いてくる。

久々に見たスーツ姿も当然ながらよく似合っていて、うっかり見惚れそうになりながら口を開く。


「どうしたの? こんな時間に」

「さっき偶然篠沢課長と会って、今日は間宮さんが残業してるって聞いたんで。用事があったからちょうどいいなと」

「用事?」


私の隣までやってきた彼は、持っていた手の平サイズの四角い箱を軽く掲げてみせる。


「試食してもらいたいチョコレートがあるんです。新商品とは別のもので」


思いがけない用事にキョトンとしてしまう。

こんな時間にチョコレートの試食をしてほしいだなんて、これまで頼まれたことはなかったし、今は私しかいないし……。


「それって、私だけじゃなくて皆がいた方がいいんじゃ……」

「いえ、いいんです。あなたさえいてくれれば」


目を見つめながらそんなことを言われて、不覚にもドキリとしてしまった。

……けど、今のはときめくような意味じゃないんだって!

私がたまたま居残っていたから、意見を聞きたいっていうだけよ!

自分にツッコミを入れつつ、動揺していないフリをして、にこりと笑みを見せて頷く。

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