無愛想で糖度高めなカレの愛
ぱっと顔を上げた私は、河瀬くんを制するように手の平を向ける。


「お言葉に甘えたいところだけど、私……彼氏いるから!」


今さらながら、嘘をついてしまった。

でも、これが一番効果的な理由になるような気がして。


私の言葉にピクリと反応を示した河瀬くんは、おもむろに眼鏡に手を掛ける。

流れるような動作でそれを外すと、カチャリとデスクに置き、何故かゆっくりと立ち上がった。

そして、座ったままの私に、初めて素顔をさらした彼が近付く。


「か、河瀬くん?」


距離がどんどん近くなるけれど、逃げられずに背もたれに背中を押し付けるだけ。心臓の鼓動は否応なしに速くなる。

なになになにっ!?

わけがわからないけど、不思議と嫌悪感や怖いという感情は湧いてこない。

目を見開く私の肩に、そっと手が乗せられた瞬間。


「……確かめさせてください」


色気を帯びた声で囁かれ、心臓と一緒に肩がビクンと跳ねた。

身体を屈める彼を目に映したまま、固まる私。

この体制……まさか、キスしようとしてるの!? 何で──!


十数センチの距離にある色素が薄めの二重の瞳は、より一層綺麗で熱っぽく見える。

それを伏せながら、ゆっくりと近付けられる顔に、私は思わずギュッと目を閉じた。

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