無愛想で糖度高めなカレの愛
○スイートな誘惑の夜の始まり
星が瞬く澄んだ初冬の夜空の下、私は河瀬くんの黒い普通車の助手席に乗り込んだ。
私も車通勤のため、一晩会社に置かせてもらい、明日の朝ここまで送ってもらうことにしたのだ。
運転する河瀬くんの姿を見るのも初めてだけれど、やっぱりイイ男は何をしても様になる。
すっきりと整った横顔、その下に見える喉仏、ハンドルに掛けられた骨ばった手……。
時々彼が年下だということを忘れてしまうくらい、仕草や表情にも色気があるなと、ドキドキしながら観察していた。
まさか、この彼と一晩過ごすことになるなんて。
いったいどうなることやら……って考えると、よからぬ想像ばっかりしてしまう!
ダメダメ、何考えてんのよ明穂! この河瀬くんだもの、絶対そんなことにはならないってば!
さっきの“男女ふたりきりの状況でそうならない方がおかしい”という発言も、きっと世間一般的な意見を言っただけ。
それに“チョコレートについて朝まで語り合える”って言っていたもの。何もしないという気持ちの表れでしょう。
……そう、彼が私に手を出すなんて事態にはならないはず。
たとえ、私に好意を抱いてくれているようだとしても。
「途中でスーパーに寄りましょう。明穂さんは何が食べたいですか?」
河瀬くんは安全だと自分に言い聞かせていると、そう尋ねられてはっとした。