無愛想で糖度高めなカレの愛
河瀬くんが暮らす七階建てのマンションは、会社から車で十五分ほど走った住宅街の中にあった。
こじんまりとした縦長のマンションで、茶色のタイルに覆われた外観はまるでミルクチョコレートのよう。
駐車場に車を停めると、河瀬くんがスーパーのビニール袋を持ち、ふたりでエントランスに向かう。彼の部屋は五階にあるらしい。
すると、ちょうどエレベーターから降りてきた中年の女性と出くわした。
小柄で優しそうな印象の彼女は、こちらを見て目を丸くする。
「あら、夕浬くん!」
「こんばんは」
名前で呼ぶ女性と、にこりともせず挨拶をする河瀬くんに、「えっ!?」と声を上げてしまった。
驚く私を見やり、河瀬くんは彼女の方に手を向けて紹介してくれる。
「ここの大家で、俺の伯母のミツコさんです」
紹介されたミツコさんという女性は、「どうも~」とにこやかに会釈した。
まさかの親戚登場に急に緊張しつつ、私も頭を下げる。
「こんばんは……!」
「や~だもう、こんなに素敵な彼女さんがいたのね! よかったわぁ。このコ外見はいいくせに研究ばっかりしてて、女の影ってものがなかったから」
明るく笑いながらペラペラと喋るミツコさんに少々気後れしつつ、私もとりあえず笑っておく。