無愛想で糖度高めなカレの愛
家にふたりで来たら、誤解されても仕方ないだろう。

私を彼女だと信じてまったく疑わないミツコさんは、河瀬くんの背中をぽんと叩いて微笑む。


「真面目でいい子だから、これからも仲良くしてやってくださいね」

「あ、はい……！」


反射的に返事をしたけれど、決して嘘ではない。

彼女の言う通り、河瀬くんがいい子だというのは前からわかっているし、仲良くしたいとも思うから。

満足げな表情を見せたミツコさんは、「それじゃ」と言ってエントランスの外へ出ていった。


「……すみません。母よりでしゃばる人で」


彼女の背中を見送った後、開いたエレベーターの扉を片手で押さえながら謝る河瀬くん。

私は先に箱の中へ乗り込み、「ううん」と首を横に振った。


「気さくで人が良さそうな伯母様じゃない。勘違いされちゃったけど」


なんだか本当にお母さんみたいだったなと、思い出し笑いをしてしまう。

すると、上がっていく階数を眺める河瀬くんが、独り言のように呟く。


「……このまま、俺の彼女ってことにしておこうかな」

「えっ？」


ドキッとして彼を見上げたその時、ちょうどエレベーターが五階に到着し、扉が開く。

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