無愛想で糖度高めなカレの愛
「冗談ですよ」


ちらりと私を見下ろした彼は、真顔でそう言って足を踏み出した。

冗談か!とつっこみたくなる私は、いったい何を期待していたっていうんだろう。

なんだか恥ずかしくなって、俯いたまま私もエレベーターを降りた。


……あぁ、私まんざらじゃないんだな、河瀬くんに好意を抱かれていることが。

気があるような言葉をもらって、ドキドキするのが楽しいのだ。

でも、それだけでは恋愛にならない。そこにちゃんと、お互いの“心”がないと。


『よかった』

『今、間宮さんが誰のものでもなくて』

『俺はあなたと一緒にいたいんです』


河瀬くんの言葉は、本心?

そして私は、彼のことをどう想っているだろう──。



自分自身に問い掛けながら、河瀬くんの後に続いて部屋に向かった。

促されて遠慮がちにお邪魔すると、物がごちゃごちゃしていない、シンプルでスタイリッシュな空間が広がる。

間取りは1LDKらしく、ひとりで暮らすには十分な広さだ。


「綺麗にしてるね~。結構広いし」


興味津々でキョロキョロとリビングを見回す。

そんな私の後ろにあるキッチンで、河瀬くんは買った食材を袋から取り出しながら言う。

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