無愛想で糖度高めなカレの愛
「やっぱり美味しい!」


柔らかくジューシーで、味付けもちょうど良い。

どんどん箸を進める私を見て、河瀬くんは「そうですか、よかった」と表情を緩ませた。

箸の持ち方や食べる姿も綺麗だな、と右隣に座る彼を観察しながら、ふと思い出して問い掛ける。


「そういえば、フライパン温めずに焼いてたよね? あれは何で?」


油はひかれていたけれど、まだ火がつけられていないフライパンにハンバーグのタネを置いていた。

普通は油を熱してから、表面に焦げ目がつくまで焼くんじゃないだろうか。

河瀬くんは箸を置き、缶ビールに手を伸ばしながら、こう答えた。


「急激な温度上昇を防いで弱火で焼くと、アクや臭みを十分に出すことができるんです。かわりに旨味を閉じ込めるので、肉汁が出ないんですよ。ちなみに、手で混ぜ合わせると体温でタンパク質が固まるので、焼いた時に型崩れしにくくなります」

「へ、へぇ~……!」


饒舌な説明を受け、目をぱちくりさせる私。

これがさっき言っていた“科学の応用”ってやつ? すごい知識……そんなことまで知っているとは。


「面白いね。他にも科学が関係してる料理があるの?」


何気なく聞くと、ゴクリとビールを喉に流し込んだ河瀬くんは、意外そうに私を見る。

< 45 / 215 >

この作品をシェア

pagetop