無愛想で糖度高めなカレの愛
「好きな人のために心を込めて作った料理だもん、美味しいって食べてもらえなかったらショックよ」


ピクリと眉を動かす河瀬くん。


「嘘をついてたら彼女のためにならないかと」

「正直に言ってもいいけど、オブラートに包まないと。“こうしたらもっといいかもね”みたいな」

「……なるほど。乙女心は難しいですね」


乙女心を手ほどきすると、一応理解したらしい彼は、相変わらずの無表情で再びもぐもぐと口を動かし始めた。

私もふふっと笑い、食事を再開させる。

しかし、ある記憶が蘇り、美味しいはずのハンバーグが一瞬味気ないように感じてしまう。


「はっきり言ってもらえなくて、余計に辛くなる時もあるけどね……」


目線を落として呟くと、河瀬くんは横目でちらりと私に視線を向けた。

少しの間を置いて、彼は遠慮がちに尋ねる。


「過去の恋愛で、何かあったんですか?」


箸を止めた私は、渇いた笑いを漏らして缶ビールを手に取った。


「……よくある話よ。彼の浮気」


静かに私を見つめる彼の表情は変わらないけれど、私はどんどん笑顔を作れなくなっていく。


「私だけが愛されてると思ってたけど、彼にとっては遊びでしかなかったみたい」


あの頃の虚しさを思い出し、私はぐいっとビールを呷った。




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