無愛想で糖度高めなカレの愛
高校時代の私なんかのことは、彼の記憶にないだろう。
ただ一度、私が落とした定期入れを拾って、わざわざ教室まで届けに来てくれたことがあっただけだから。
だけど私は、その一度の出来事で、彼のことを特別視するようになっていたのだ。
近寄りがたい雰囲気の人だと思っていたけど、意外と優しいところがあるんだな……と。
ずっと遠くから見ているだけの、手の届かない憧れの人。
そんな先輩と、共通の友達が開いた飲み会で再会した時には、もう胸が高鳴ってどうしようもなかった。
その時に初めてまともに話して、番号を交換した。
連絡を取り合うようになり、食事に誘われて。
三回ふたりきりで会った後、『俺と付き合わない?』と言われ、迷うことなく頷いた。
私なんかが彼と恋人になれるなんて、本当に夢みたいなこと。
あの頃の私の心は、完璧に高校時代にまで遡っていて、憧れの先輩のたったひとりの恋人になれたことを、ただただ幸せに思っていた。
『愛してるよ』
『明穂とずっと一緒にいたい』
そんな甘い言葉を毎日囁かれて幸せで、幸せすぎて……盲目だった。
元々、男性経験が乏しかった私は、彼の罠にハマっていることに何も気付いていなかったのだ。
ただ一度、私が落とした定期入れを拾って、わざわざ教室まで届けに来てくれたことがあっただけだから。
だけど私は、その一度の出来事で、彼のことを特別視するようになっていたのだ。
近寄りがたい雰囲気の人だと思っていたけど、意外と優しいところがあるんだな……と。
ずっと遠くから見ているだけの、手の届かない憧れの人。
そんな先輩と、共通の友達が開いた飲み会で再会した時には、もう胸が高鳴ってどうしようもなかった。
その時に初めてまともに話して、番号を交換した。
連絡を取り合うようになり、食事に誘われて。
三回ふたりきりで会った後、『俺と付き合わない?』と言われ、迷うことなく頷いた。
私なんかが彼と恋人になれるなんて、本当に夢みたいなこと。
あの頃の私の心は、完璧に高校時代にまで遡っていて、憧れの先輩のたったひとりの恋人になれたことを、ただただ幸せに思っていた。
『愛してるよ』
『明穂とずっと一緒にいたい』
そんな甘い言葉を毎日囁かれて幸せで、幸せすぎて……盲目だった。
元々、男性経験が乏しかった私は、彼の罠にハマっていることに何も気付いていなかったのだ。