無愛想で糖度高めなカレの愛
しっかりと腕に絡み付く女性に、優しく微笑みかける彼。そんなふたりは、きっと誰が見ても仲の良さそうなカップルだと思うだろう。

……私以外は。


本当は、彼の言動に怪しい部分があることには前から気付いていた。

それすらも、私は目を背けていたのだ。

確かな証拠を見付けなければ、彼に愛されているのは私だけだと信じていれば、幸せでいられると思っていたから。


しかし、ついに確証を見付けてしまった。

ショックは想像以上で、その時どうやって家に帰ったかも覚えていない。

ただ、彼がつけている香水の、バニラの香りが微かに残る自分の部屋に入った瞬間、せきを切ったように涙が溢れ出して。

心配した沙織が、私を抱きしめて慰めてくれたことだけは、しっかり心に残っている。


これから私はどうしたらいいのか。

また目を瞑って、何も見なかったフリをして付き合い続けるのか。

しばらくひとりで冷静に考えたものの、はっきりとした答えを出せず、結局一度彼と会ってから決めることにした。


会ってしまえば、まだ好きだという気持ちが勝ってしまうような気もしたのだけれど、不思議とその逆だった。

この人はきっと、私を上手く利用しているだけ。

一度そう思ったら、彼を冷めた目でしか見れないことを実感した。

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