無愛想で糖度高めなカレの愛
『俺が愛してるのは、明穂だけだよ』


浮気を問い質しても、肯定も否定もせずに、いつもの魅惑的な笑みを湛えてそう言った彼。

その言葉に、真の愛情なんて感じられない。微笑みすらも、胡散臭く思えた。

たくさんの甘いフレーズで惑わされていたけれど、ようやく目が覚めた気がした。


もう私の中で答えは出ていたけれど、最後にひとつだけ質問をした。

『もし、私が浮気したらどうする?』と。

すると、彼は、

『明穂に浮気なんてできるわけないだろ』

と、呆れたような笑いを漏らして、当然のように答えた。


……やっぱりこの人は、私が惚れ込んでいると安心しきっている。

だから他の女性と遊べるのだと、冷めた心で感じた。

クリスマスに彼が言った、『結婚しても、明穂となら上手くやれそうだ』というのも、“浮気を上手くやれそうだ”という意味だったのではないか──。そんなふうにさえ思えた。



彼と会ったのはそれが最後。

もちろん悲しさや悔しさはあったけれど、どこかスッキリとしていて、もう涙は出なかった。


目が覚めてよかった。

私だけを愛して抱きしめてくれる、真摯な人はきっと他にいる。

もう上辺だけの甘い言葉はたくさん。欲しいのは、本気の想いなの──。


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