無愛想で糖度高めなカレの愛
告白したわけでもないけど、改まってこんなこと言うと恥ずかしいな……。

何か言いたげにする夕浬くんに、照れ隠しでにこりと笑ってみせる。


「本当にいろいろとありがとね。じゃあ、また」


シートベルトを外し、出ようとドアに手を掛けようとした瞬間。

腕を掴まれて振り向くと、運転席から少し身を乗り出した彼に、唇を奪われた。


「っ、夕浬くん……!」


唇はすぐに離されたけれど、私は驚きで目を見開き、心臓も動くスピードが速くなる。

土曜日の今日は、出勤するのは工場勤務の人達だけだし、今ここから見えるところに人影はない。けど、誰に見られてもおかしくない会社の駐車場でキスするなんて!

夕浬くんがこんな大胆なことをするとは意外だ。


「俺、余裕があるわけじゃないんですよ。明穂さんのこと、本当は強引にでも自分のものにしたい」


腕を掴んだままの手に少し力が込められ、ドキンと心臓が反応する。

そんなに想ってくれているなんて、本当に嬉しい。


「でも待ちますから。今の言葉、忘れないでくださいね?」


あまり表情に変化はないけれど、気持ちはストレートに伝えてくれる。

そんな彼が私の中で特別な位置に居座るのを感じながら、私は笑みを向けてしっかりと頷いた。


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