無愛想で糖度高めなカレの愛
じっと資料に目を落とす河瀬くんを私も見つめていると、彼の唇がゆっくり開いた。


「面白いじゃないですか」


出てきたのは、前向きな一言。

再びぱっと表情を明るくする私を、目線を上げた彼の瞳が捉えた。

マネキンのように整った顔で見据えられたかと思うと、河瀬くんは細い顎に手をあてて考えるように目を伏せる。


「おそらく過去最高になめらかで柔らかなチョコレートソースになるでしょう。商品を再現するのはきっと不可能ではないですが、生産ラインや食べやすさの問題をクリアしなければなりません」


抑揚のない声で淡々と述べた彼は、「でも」と言葉を繋げ、再び私と目線を合わせる。


「難しいからこそやりがいがある。試してみる価値はあると思いますけどね」


そう言いながら、一瞬だけふっと見せた不敵な笑み。

河瀬くんの自信がかいま見えた気がして、私の胸はわずかに震えた。

私の意見を聞き入れてくれたことが単純に嬉しかったのもあるけれど、彼の研究に対する情熱みたいなものが、さすがだなと思ったのだ。


河瀬くんの意見に頷いた室長は、和やかに微笑んで言う。


「間宮さんの案、もう少し練っていきましょうかね」


第一関門を突破したような清々しい気分で、「ありがとうございます!」と頭を下げた私は、さらに具体的な話を進めていった。


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