無愛想で糖度高めなカレの愛
「間宮さん?」

「へ? ……あ、はいっ!」


小首をかしげた夕浬くんにはっとさせられて、ぴんと背筋を伸ばした。

やば、会議中なのに! もしかして今、私が意見を求められていた?

無表情の彼の眼鏡がきらりと光り、仕事モードの鋭い眼差しが私を捕らえる。


「前回よりも乳原料の割合を高めたのですが、ミルクのコクはいかがでしたか? 舌触りや甘さ、香りは?」

「は、はい、いいと思います! 完璧です!」


おそらくさっきも言ったであろうことを、冷めた口調でもう一度聞く彼に、私は敬礼しそうな勢いで答えた。

夕浬くんは、疑わしげにほんの少し眉をひそめる。


「本当ですか? 妥協したくはないので正直に言ってください」

「本当です本当! カカオ成分が高いからチョコレート本来の香りがするし、なめらかさもコクも申し分ないです!」


夕浬くん達が精一杯作ってくれたチョコレートに、真剣に向き合っていなかったと思われたくなくて、自信満々に伝えた。

さらに意見を述べようと、右手に鮮やかなピンク色のチョコレートを、左手には丸いトリュフを手に取り、すっくと立ち上がる。

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