無愛想で糖度高めなカレの愛
「間宮さん」
十二時に会議が終わり、廊下へ出たとたん、窓辺の壁に背中から寄り掛かっていた夕浬くんに呼び止められて、ドキッとした。
私と一緒にいた美結ちゃんは“おっ”という顔をした後、意味深な笑みを浮かべる。
そして、「先輩、先にランチしてますね~」と言い、夕浬くんにぺこりと会釈して開発課へと歩いていってしまった。
気が利く彼女から、左手に資料を抱え右手をポケットに入れた、柔らかな陽が当たるまばゆい白衣姿の彼へと視線を移す。
こんなイケメン先生がいたら女子達はイチコロよね……なんて、頭の隅っこで彼が化学や生物を教える姿を妄想しながら、私は笑顔を向ける。
「ゆう……か、河瀬くん! どうしたの?」
つい名前で呼んでしまいそうになりつつ、ぎこちなく言い直した。
そんな私を見ても、彼は表情を変えないまま口を開く。
「さっきは嬉しい意見をありがとうございました。間宮さんにああ言ってもらえると、本当に自信が持てます」
「思ったことを言ったまでよ」
嬉しさが胸に広がるのを感じながら、小さく首を横に振って言った。
前も会議の後に同じようなやり取りをしたっけ。あの時は立場が逆だったけれど。
デジャヴュみたいなことに含み笑いしていると、夕浬くんは眼鏡を押し上げ、私の顔を覗き込む。