無愛想で糖度高めなカレの愛
会議が終わると、美結ちゃんに「先に戻ってて」と告げ、皆の後に続いて出ていってしまった河瀬くんを追い掛けた。
一言、お礼が言いたくて。
私達のコンセプトに添った試作をやるかやらないかは、最終的には室長に掛かっている。
けれど、そのためにはまず、室長の右腕と言ってもいい河瀬くんを落とさなければいけない。
門番みたいな存在の彼が、私の案に前向きな意見をくれたのは、とてもありがたいことだから。
おかげで、女性向けのチョコレートも試作してもらえることになったし。
「河瀬くん!」
白衣のポケットに片手を入れて歩く彼を呼ぶと、美麗な顔がこちらを振り返った。
小走りで駆け寄り、隣に並んで歩きながら、百七十センチ後半くらいの長身の彼を見上げて微笑む。
「さっきはありがとね。一応篠沢さんも納得してくれたみたい」
「いえ、僕は思ったことを言ったまでなので」
ここでニコッと微笑んでくれたら、もっと好印象になると思うんだけどなぁ。余計なお世話だけど。
私達は、研究室と開発課という組み合わせの中では、よく話している方だと思う。
だから、もう少し距離が縮まっても良さそうなものだけど、依然“ただの仕事仲間”という関係は変わらない。