無愛想で糖度高めなカレの愛
●色男とビターな再会
「本日より、営業課に配属になりました。手塚恵次(テヅカ ケイジ)と申します」
十二月の初日、開発課の篠沢課長のデスクの前で彼女と並んで立つその人は、オフィスに低音ボイスを響かせた。
彼の外見は、三年前と少しだけ変わっていた。えりあしが少し短くなり、口元の髭は綺麗に剃られている。けれど、精悍な顔立ちはもちろん、漂うセクシーさは今も健在だ。
皆が彼に注目し、女性社員は目を輝かせる中、私は直視し続けることはできず、自分のデスクへと顔を背けた。
穏やかな笑みを湛えた彼は、自己紹介を続ける。
「前職の食品会社では、加工食品の販売が主でしたので、菓子の部門は初めてです。不慣れではありますが、経験を生かし、皆様のお力になるべく全力で取り組みたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」
ハキハキと話す姿は誰が見ても好印象で、彼が頭を下げた瞬間、どこからともなく拍手が湧き起こる。しかし、私は人知れず動揺しまくっていた。
まさか、恵次だったなんて……!
これは神様の嫌がらせ? というか、食品会社で働いていたのは知っていたけれど、彼は広報の人間だったはず。いつの間に営業マンになってたのよ!?
あぁ、会いたくなかった。せっかく思い出にできそうだったのに、また関わらなきゃいけなくなっちゃったじゃない……。