無愛想で糖度高めなカレの愛
河瀬くんの生態って本当に謎だから、ちょっと知りたい気持ちもあるのだけど。

私がそんなことを思っているとは知る由もないだろう彼は、無表情のままつらつらと話し出す。


「僕も目新しいことに挑戦してみたかったんです。チョコレートソースは難しそうですが、フランボワーズの酸味はビターとホワイト、どちらのチョコにも合いますね。ラムレーズンも大人向けで、たしかに女性は好きでしょうし……」


あぁ、始まっちゃったよ。普段無口だけど、研究のことに対しては饒舌になるのよね。

年数回行われる、開発チームでの飲み会や食事会でも同じで、研究の話になるとものすごいのだ。

その半分以上は、何のことやらよくわからないんだけど。


そんな彼がちょっぴりおかしくて、ふふっと笑いがこぼれた。

すると、ずっと前を見て話していた河瀬くんは、突然私に目線を落とす。


「でも、女性をターゲットにするなんて意見を出すってことは……」


目を見合わせた私を、彼は中指で眼鏡を押し上げながら、まじまじと見つめてこう言った。


「間宮さんは本命をあげる相手がいないってことか……。切ないですね」

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