無愛想で糖度高めなカレの愛
周りの皆と同じように、私も見て見ぬフリをしておこうと思った、その時。


「手塚くんは今彼女いるの?」


課長のストレートな質問を耳がキャッチしてしまった。

聞かなくていいことなのに、意識はふたりのやり取りに集中してしまう。


「いえ、独り者です。縁がなくて」

「そうなの!? 意外だわ。でもそろそろ結婚考えてもいい時期じゃない?」

「……結婚、考えた時もありますけどね。一度だけ」


──ドクン、と胸の奥で重い音が響いた。

それってまさか……私、じゃないわよね?

一瞬そんな考えが浮かぶけれど、すぐに打ち消した。

本気で私と結婚しようなんて思っていなかったはず。これはきっと、別の誰かのことだ。

そう思い直していると、室長にお猪口を渡された。それを手に構え、注がれる日本酒を見つめるけれど、意識はまだ恵次達の方に向いている。


「その人とはどうしてダメだったの?」

「俺がバカだったんです。もっと大事にしてあげればよかったって、今でも後悔してますよ」


苦笑する恵次に、課長は若干呆れたようなため息を漏らして言う。


「失ってから気付くってヤツ? よくあるパターンね」

「そう、バカでしょう?」

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