無愛想で糖度高めなカレの愛
肩を抱かれたままトイレの前までやってくると、夕浬くんはようやく手を離した。


「すみません、無理に連れ出して」

「ううん、私も抜けようと思ってたところだったから。ありがとう」


あの場から離れただけでいくらか気分が軽くなったのだけど、まだ不安そうな表情を見せる夕浬くんは、私の頬にそっと手をあてて言う。


「顔色が悪い。大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ。ごめんね、気を遣わせて」

「いえ……なんとなく、ひとりにさせたくなかったんで」


ぬくもりのある言葉が、私の胸にじんわりと染み込む。彼の優しさはとても嬉しい。

でも、私が酔って具合が悪いとは思っていないはず。きっと恵次の話を聞いていて、私達の関係にも気付いたんだよね……?


「……私達のこと、バレちゃった?」


少し決まりが悪くて上目遣いで聞くと、夕浬くんは眼鏡を押し上げ、抑揚のない口調で答える。


「前から薄々感づいてましたけど、ついさっきの明穂さんの様子を見て確信しました。あと、彼が飲んでいたのはウイスキーだったし」

「ウイスキー?」


何でそれが出てくるのだろうかと首をかしげる私に、彼は腕組みをしながら説明する。

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