月下美人の咲く夜を
ある天気のいい日。
休日の朝だというのにベッドを早々に出て、僕といちゃつくより先に鉢の世話を始めた彼女。
邪な下心を抱えて後ろから抱きしめると、
『この子が先』と言って俺の手を流れるように払い、優しく葉を拭き始めた。
「………なんでそんなに気に入ったの?それ。」
その姿を半ば呆れ気味に見ながらつまらなそうにそう声をかけると、
「だって…。私たちふたりの名前の一部が入った花なんてステキでしょ?
私はこの花が開くのを、月人と一緒に見たいの。」
咲月は頬をちょっぴり赤らめながらそう微笑んだんだ。
その可愛さと言ったら。
「あの人も育てたことあるって言ってたよ?えーっと……。」
その先の言葉をなんて言ってたかなんて覚えてないくらいだった。
これは、2年前のひとコマだ。