月下美人の咲く夜を

虚しい掌をキュッと拳に変え、レザーシートにどさりともたれて目を閉じる。

浮かぶのは、やっぱり咲月だ。

『おかえり』

『ただいま』

『大好き』

『…月人』

声はこんなにもまだ心にこだまするのに………

その空気を感じられることは、もうない。


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