月下美人の咲く夜を
Ⅲ
ポツリポツリと……、フロントガラスに当たり始めた雨粒に気づきはっと我に返る。
「……………。」
こんな風に過去にとらわれて思考停止するのは日常茶飯事だ。
しがみつくようにぎゅっとハンドルを握りしめ車を発進させると…、
『帰ろ、月人。』
胸の奥深くで、いつかの咲月の声が優しく響いた気がした。
天真爛漫な笑顔がすぐに浮かぶ声が。