月下美人の咲く夜を

ガチャリと鍵を開ける。

バタリと扉を閉める。

また鍵をかけ、靴を脱いで部屋へ入る。

カバンはドサリとソファに投げ、スーツのジャケットを脱いでグイッとネクタイを外す。

無言で進めていく一連の動作は冷たく無機質で、咲月がいなくなってから色を失ったように暗い俺の生活を更に淋しくさせる。

「……………。」

目を閉じて瞼に映る思い出だけが、鮮やかに彩られているんだ。


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