月下美人の咲く夜を

「……………あれ?店長、禁煙はどうしたんですか?」

若妻に『健康の為に禁煙して』とせがまれたと言っていたのはついひと月ほど前だったはずだ。

それなのにそのポケットから取り出されたのは確かにタバコだった。

「あぁ、それな。仕事中だけ、2日で一箱っていう条件付きでコレだよ。」

親指と人差し指でつまむように持たれたのは薄いブルーの箱だった。

「メビウス。1mg…ですか。」

「そ。吸った気しねぇけど、ま、仕方ねぇからな。」

渋い顔をしながらその煙を燻らせる店長は、それでも幸せそうに見えた。


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