月下美人の咲く夜を
風呂上がりに缶ビール片手にソファに腰を下ろす。
何気なくつけたテレビは流行りだという恋愛ドラマを映していた。
「……………。」
黙ってリモコンのボタンを幾つか押していると、目に飛び込んだのはニュース画面だった。
「…っ!」
どくりと心臓が叩かれたような衝撃を覚える。
店舗に突っ込んだのであろう車は前面が潰れ、ガラスが散乱していた。
『……に、軽乗用車が突っ込みました。
歩道を歩いていた30代女性が巻き込まれ重傷です。運転していたのは…』
ープツリー
「……………はぁ。」
冷や汗と重苦しい溜息が胸を締め付けて苦しい。
咄嗟に持っていたビールを、口元から滴るのも構わず飲み干した。
「……………っ、はぁ。……くそっ!」
力任せに握った缶は乾いた音を立ててその形を崩した。
油断していたとはいえ強制的に見せつけられた光景は、心を縛り付けて傷つけ続ける過去を連れてくる。
あの、
咲月を失った日を。