月下美人の咲く夜を
それから、咲月が残した本やノートを頼りにこの花を育ててきた。
咲月を撫でるように葉を撫で、咲月に微笑みかけるように見つめ続け、愛おしくすら思えるほど大事に大事に育ててきた。
『恋人の代わりのように鉢植えを愛する男』
はたから見ればきっとそれは、狂っているとしか思えないかもしれない。
でもそれでも構わなかった。
『もう一度触れるチャンスを』
それはほどなく、咲月じゃなく自分の願いに変わっていったから。