月下美人の咲く夜を
秋の空気が色濃くなってきたある日の夜。
決算とかなんとかでここしばらく残業が続き、俺はヘトヘトになっていた。
「お、須賀。終わったんならたまには一緒に飲みに行くか?
最近あんま食ってねーんだろ。美味い肉食わせてやるよ。」
最後まで残って事務処理を片付け、席を立つとちょうど出先から戻った店長に声をかけられた。
相変わらずこの人は、俺のことを気にかけてくれている。
「いやー、このヘトヘトで酒呑んだら俺倒れますよ。」
「いいから来いよ。少し飲んだら解放すっから。」
店長は半ば無理やり俺を引っ張り、何度か連れて行ってもらっている馴染みの焼肉店に連れて行った。