月下美人の咲く夜を
「………ふぅー。」
「…奥さんに怒られますよ。」
テーブルに着くなり一服を始めた店長をチラリと見つつポケットから出したタバコにこちらも火を点ける。
「……いんだよ。それよりそれ。」
クイっと顎で示したのは俺の手にあるジッポライターだ。
俺の誕生日に咲月がくれたもので、表には『happybirthday TSUKITO』と、裏には『from SATSUKI』と刻印されている。
「………目ざといですね。」
ふぅと煙を吐き出してそう言うと、ゴツい顔を少し歪ませて店長はこう返した。
「だってお前、それ貰ってからもうずっとそれしか使ってねーだろ。」