月下美人の咲く夜を
『つ…き…と…。月人…。』
夢と現実の狭間のまどろみの中、愛しい声を聞いた気がした。
『月人………。ねぇ……月人………。』
耳元で囁くように、俺の名前を呼ぶ。
そういえば着替えもしないで寝ちゃったっけ。
あぁ…、でも疲れてもう目も開けたくない。
このまま…咲月の夢を見ていたい……。
『…月人ってば。……ねぇ、起きて?』
『起きて』?…なんて現実的な。
まるで本当に咲月が起こしに来てるみたいに響いたセリフに笑えてくる。
ホントに俺、末期症状だな。
でもふと、そこにいるかのようにふわりと甘さを含んだ香りが………
「月人!」
「!?」
確かに大きく耳に響く声と身体を揺すられる感覚に思わず目を見開くと、そこにいたのは……
「………さ………つ、き………?」
ずっとずっと、会いたくて仕方ない
咲月だった。