月下美人の咲く夜を

『たった一度』


願い、

祈り、

叶ったのは夢か幻か泡沫か。


「咲月…咲月。……なぁ、行くなよ。」


まだ火照りの冷めない身体のまま強く抱きしめると、鮮やかな香りになぜか強い眠気を覚えた。


「ねぇ、月人。

もう…地上に降りようね。」


薄れゆく意識の中で確かに咲月はそう言った。



「あぁ……ありがとう。幸せだった。」



その声が彼女に届いたのか届かなかったのかはわからなかったけど、


精一杯、それが精一杯だった。



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