愛よりも遠い距離



あの日、マンションを飛び出した私が見たのは大きな大きな夕焼け。



夕焼けに大きい小さいがあるのか定かではないけれど、夕焼け子焼けという歌があるぐらいだから、きっとあの日の空は大焼けだったんだと思う。



雨は降らなかったが神様はこうして思い出せるよう、プレゼントをくれたのかもしれない。



忘れたほうが幸せだなんて……アキとの時間が愛し過ぎて、とてもそんな事思えないから。



「無事に成功ですよ」



満面の笑みを浮かべる現地コーディネーターはジャネットと名乗り、南米の人間らしい黒い肌に白い歯をにっと見せると、そっと背中を撫でてくれた。



< 16 / 24 >

この作品をシェア

pagetop