愛よりも遠い距離
体には複数のチューブが伸びていて、自分で自分の体を動かすことも叶わない。
ただ黙って背中を何度も撫で微笑んでくれるジャネットの顔を見ていたら急に実感が湧いてくる。
やっと、女の子に……なれたんだ。
痛む体を少しだけ起こし、手渡してもらった鏡に映る自分の顔はただ化粧を施していないだけで、別段普段と変わりは無い。
見た目から感動を覚えないのは長い間飲み続けていた女性ホルモンが含まれた薬のせいなのかもしれない。
それでも、人生の大仕事を終えた私の心は晴れていた。
ここまで……本当に長かったから。