ぼくらのストロベリーフィールズ
「のばらちゃんもさ、俺でよかったらいつでも頼ってよ」
バス停まで送ってくれた尚紀くんは、さらりとそう言って笑った。
「ありがとう。すごいね……私、尚紀くんのこと尊敬するよ」
「あはは、そんな大したもんじゃないって」
「何だろう。本当にお兄ちゃんみたい」
暗いバス停で、私たち2人きり。
まわりの家から漏れてくる声や、遠くの大通りからのエンジンの音が響く。
「…………」
尚紀くんは無言のまま、表情をふっと曇らせた。
あれ、私、言っちゃいけないこと言ったかな?
少しずつバスの光とエンジン音が近づいてくる。
「ま、たまには息抜きしたいよ。俺だって」
ぼそりとそうつぶやき、尚紀くんは私の髪に手を伸ばした。
突然、距離を詰められ、心臓がどくんと大きく鳴る。
そのまま髪の毛を指でとかされ、思わず目を伏せた。
街灯に照らされた2つの影が重なっていた。