ぼくらのストロベリーフィールズ
「…………」
きっと私は、尚紀くんにとって妹みたいな感じ、だよね?
頭をなでなでしてくれているだけだと思い、その手を受け入れたけど。
サイドの髪が指に絡められ、頬があらわにさせられた。
そこに尚紀くんは顔をぐっと近づけて……。
――え。
頬に落とされたのは、柔らかな唇の感触。
「……っ!?」
驚く間もなく、バスが到着する。
尚紀くんはじっと私を見つめた後、口角を上げた。
「男が本当に好きなのは、危険と遊びっていうしね」
「な、何それ?」
「ニーチェの言葉」
「ニッチェ?」
「あははは! それはお笑いコンビでしょ。ウケるー。じゃまたね」
とんと背中を押され、その勢いでバスに乗り込む。
ドアが閉まり、爽やかな笑顔で手を振る尚紀くんの姿がガラス越しに見えた。